何で怒っちゃったんだろうと考えていました。そして、悪かった、ごめんなさいと思いました。怒るようなことはなかったし、僕は小さいヤツでした。寂しさを怒りにかえるのは、僕にとっても、相手にとってもつまらないことでした。何より大切なルールは「好きな人が幸せになること」だと、知っていたはずなのに。ごめんなさい。

少し寂しい。けれど、卒業を告げてからずっと笑っている姿を見ていると、それもまたよいことだと心は和らいできました。自分だって同じようなもの。何の予定もない週末は特別にワクワクします。次は何をしようかと自由を枕に横たわり、見上げる空は途方もなく高い。その景色を一度も見たことがないというのは、夏の海や銀色の星や千切れる草原を知らないようなもの。見せてあげたい。見てほしい。好きなことを、好きにできる。それはとてもいい日です。

歌を唄うことが「一番」だと思っていたから、勝手に少し戸惑っただけで、わけがわからなくなってほかの一番が見つかったなら教えてくれればいいのにと思っただけで、一番はひとつじゃなくいくつあってもよかった。海の碧さと空の蒼さのどっちが素晴らしいなんて、決めようとするのはくだらない。その一番を半分に割って両手で交互に食べることもできるのかもしれないけれど、そういうことができなそうだから、そういう人に親しみを覚えて、好きになったんだと思ったら、納得できるというか、しょうがないというか、「ありえる」。

このまま辞めちゃうんじゃないのかと思った日、笑えるくらい何度もアンコールに応えて出てきてくれたのだから、手を振る時間は十分にあったわけで。その時はまだ知らなかったけれど、その時にそうなんじゃないかと感じたのなら、その時に知っていたのと同じことです。不義理なんて言って本当に悪かったなと反省しています。知らなかったふりをしてごめんなさい。

今日、会場に行けない人もいるでしょう。どうしても都合がつかない人もいるでしょう。ただ、絶対に今日行きたい人なら、その気持ちを抱いて彼女が何度も手を振った会場のどこかに一回くらいはいたでしょう。「あぁ、あのときもそうだったのか」が一回くらいあるはず。その日・その時を「全力」でやろうじゃないかというのが約束なのだから、その一回が最後であったとしても悔いがないようにしっかりやるのが筋。大丈夫。

過ぎてみれば「一週間で全然足りたわ」と思います。いっぱい楽しんで、出し惜しみをお互いしなかったから、いつ終わってもいいくらいにやり切ってきたんだなと。そして、やっぱり心をわけたメンバーはスゴイなと思いました。単純に大変だったりすることも多いだろうに、一時間半くらいで整理をつけて、「申し訳なさそうに」ではなく「ずっと笑っていられる」ような受け止め方をしてくれているのだから。さすが、奇跡の5人。これが「不仲」とか「心の壁」に見える人もいるんだなぁと驚くしかないです。ずっ友だよ、あれは、たぶん。

だから、お別れを言うみたいな気持ちもスッと溶けていきました。ただただ、いつもどおり楽しみにいきます。お別れの曲もいらないです。それはもう武道館で聴いた、聴いた。なんやかんやで泣くかもしれないけれど、哀しくて泣くんじゃなくて、クライマックスの雰囲気に感極まっただけの流され涙でしょう。エンディングじゃなくオープニング、タイトルどおりの気持ちで見に行きます。楽しんで。

いやね、僕は好きな人にあとから気づくことが多くって、好きな人が過去だったりしたこともたくさんあって。もういなくなってるじゃんってことがしょっちゅうで。でも、あなたを初めて認識した日のことをすごくよく覚えていて。みんなと別行動で、少し冷めた目で、自分がカメラまわすからって、はしゃぐ仲間を後ろから見ていて。こいつスカしてるなって思ったけど、そうじゃなくて。あぁ心の距離感が僕と近いな、安らぐな、似ているな、好きだなって気づいて。好きになるのは難しくて珍しいことなのに、好きになれてよかったなって。選択肢から選んだんじゃなくて、そこにいたのです。これこれこういうの好きなんだよね、な、あなたが。

成長する姿を、どんどん眩しくなる未来を、同じ時間に一緒に過ごせたというのが嬉しくて。毎年の季節に、新しい彩りが加わって。青が好きだったはずなのに、いつの間にか緑が好きな色になって。曲じゃなく、映像じゃなく、リアルタイムだからお互いの日々のよしなしに影響がきっとあって、駆け抜けることができたなっていう充実感があるのです。誰もいなくなったトラックじゃなく、一緒に駆け抜けられたから共有できる充実感が残っているのです。

このライブがはねたら、何もかもが自分のものになります。

今は何もない予定に、何を入れるのか。

ひとつだけ僕が人生で思ってきたことを言うなら、人生で自分がやるべきことは「好きで、得意で、役に立つ」ことだと思います。それをしたくてたまらなくて、ほかの人よりも上手にできて、誰かの役に立てることを、自分のなかに見つけられたら、それをやるのが充実した人生だろうと思います。それを探し、それを見つけられたら幸福になれるのだろうと、そう思うのです。それをやる人は、お金だけでも名誉だけでもなく「ありがとう」をもらうのです。「ありがとう」をたくさん言われること以上の幸せはきっとないです。人生で一番聞きたい言葉は「ありがとう」です。

「ありがとう」とたくさん言われることを見つけてください。

有安杏果さん、たくさんの楽しいをありがとう。

ありがとね。ほんとにね。頑張ったね。

楽しみましょう、今日を。

最高の一日になりますように。

終わりの日ではなく、始まりの日の最高のスタートになりますように。